「奈良桜井・聖林寺」厳しさと優しさを感じさせる国宝の十一面観音立像

2016年04月08日

「奈良桜井・聖林寺」厳しさと優しさを感じさせる国宝の十一面観音立像

「奈良桜井・聖林寺」厳しさと優しさを感じさせる国宝の十一面観音立像

桜井の地の奈良盆地を見下ろす高台に立つ「聖林寺」は小さなお寺ですが、国宝の十一面観音立像や安産と子授けの「子安延命地蔵」を安置する奈良時代創建の由緒ある古寺なのです。

見た目はごく普通の小さなお寺ですが・・・

「聖林寺(しょうりんじ)」は桜井の街の南、北に奈良盆地を見下ろす多武峰山麓の中腹に立つ小さなお寺です。高台にあるため境内からの眺望は素晴らしく、いにしえの人々が見たのと同じ三輪山の山稜や古墳群を望むことができます。聖林寺の創建は奈良時代初めの712年(和銅5年)、談山・妙楽寺(現:談山神社)の支院として藤原鎌足の長男である定慧(じょうえ)が開基したと伝えられ、鎌倉時代初期の建久年間(1190年~1199年)に三輪にあった平等寺遍照院を移して再興されたそうです。見た目はごく普通の小さなお寺なのですが、その歴史はなかなか古いのですぞ。

「十一面観音立像」は“天平彫刻の最高傑作”

そして聖林寺の名を高めているのが、観音堂(大悲殿)に安置されている国宝の「十一面観音立像」です。像高209.1cmのこの観音様は、760年頃に東大寺の造仏所で造られました。“天平彫刻の最高傑作”との誉れも高く、均勢の取れたプロポーションや繊細な指先、慈愛に満ちた横顔は女性的な優しさを醸し出す反面、正面から見たお顔は男性的な厳しさを感じさせます。まさに救いを求める者を導く父の強さと、暖かく守る母の愛を具現化した姿なのです。仏像に詳しくない方でも、この十一面観音立像にはきっと心を揺さぶられるに違いありません。明治時代に来日した哲学者で美術研究家のアーネスト・フェノロサも激賞し、日本の哲学者の和辻哲郎も著作の『古寺巡礼』の中で褒め称えています。

ちなみにこの十一面観音立像は、もともとは三輪山をご神体とする大神神社の神宮寺である大御輪寺の本尊でした。それが明治維新の際に吹き荒れた“神仏分離・廃仏毀釈”の嵐によって廃棄される危険性を帯び、それを憂いた大御輪寺の廓道(かくどう)和上が聖林寺に依頼して安置してもらうことになったそうです。

ご本尊は安産と子授けの「子安延命地蔵」

このように聖林寺は十一面観音立像で名高いお寺ですが、ご本尊は大きなお顔がチャーミングな「子安延命地蔵」になります。江戸時代に当時の聖林寺住職であった文春和尚の発願で造られた彩色の石仏像で、「掌善童子」「掌悪童子」の両脇侍とともに祀られています。文春和尚はお産で苦しむ女性たちを救うためにこのお地蔵様を造ろうとし、4年7ヶ月におよぶ托鉢で得た浄財によって造像したそうです。それ以来、聖林寺の子安延命地蔵は霊験あらたかな安産と子授けのお地蔵様として親しまれ、今もご祈祷を願う人々が数多く訪れています(安産祈願ご祈祷料:10,000円/求子(子授け)祈願ご祈祷料:15,000円。どちらも予約制ですので詳しくは公式ウェブサイトでご確認ください)

聖林寺への交通アクセス等

■ 所在地:奈良県桜井市下692

■ 交通アクセス:
◇ JR・近鉄桜井駅南口から桜井市コミュニティバス多武峯線にて「聖林寺バス停」(約8分/運賃230円)下車、徒歩 約5分

■ 拝観時間:9:00〜16:30(年中無休)

■ 拝観料金:一般(中学生以上)400円/小学生200円
*11月の曼荼羅公開時のみ:一般(中学生以上)500円/小学生250円



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