「奈良初瀬・長谷寺」全国3000余の末寺を擁する風情豊かな“花の御寺”

2016年05月09日

「奈良初瀬・長谷寺」全国3000余の末寺を擁する風情豊かな“花の御寺”

「奈良初瀬・長谷寺」全国3000余の末寺を擁する風情豊かな“花の御寺”

奈良県桜井市東部の「初瀬」は、8世紀前半創建の「長谷寺」の門前に開けた町です。そしてこの歴史ある長谷寺は“花の御寺”とも称され、平安古典文学にも登場する風情豊かなお寺なのです。

古くからの歴史を持つ真言宗豊山派の総本山

「初瀬(はせ)」は奈良県桜井市東部の町で、古くは「泊瀬」とも表記されました。『万葉集』にも「三諸つく 三輪山見れば 隠口の 泊瀬の桧原 思ほゆるかも(神様を祀る三輪山を見ると渓谷深く繁っている初瀬の檜原を思い出す)」という初瀬の名が載った歌が詠まれています。初瀬は古代大和朝廷の聖地であり、葬送の地でもあったのです。

今回ご紹介する「長谷寺(はせでら)」は、大和と伊勢を結ぶ初瀬街道を見下ろす初瀬山の中腹に立っており、その創建は奈良時代の8世紀前半と推定されています。寺伝によると、686年(朱鳥元年)に道明上人が天武天皇の病気平癒を祈願して「銅板法華説相図(千仏多宝仏塔)」を初瀬山の西の岡の石室に安置し、続いて727年(神亀4年)に徳道上人が東の岡に「十一面観世音菩薩」を祀って開山したそうです。平安時代には都の貴族の間で“初瀬詣”が広まり、紫式部や清少納言らも長谷寺を訪れました。江戸時代には初瀬街道を通った伊勢神宮への“おかげ参り”の往来も盛んになり、初瀬は長谷寺の門前町として今も変わらぬ賑わいを見せています。

現在の長谷寺は全国に約3,000の末寺、約5,000人の僧侶、およそ300万人の檀信徒数を擁する真言宗豊山派の総本山として、さらには西国三十三観音霊場(近畿2府4県と岐阜県に点在する33か所の観音信仰の霊場)の第八番札所として篤い信仰を集めています。

国宝や重要文化財の伽藍が立ち並びます

昔ながらの雰囲気が漂う長谷寺の参道を進んでいくと、第107代後陽成天皇(在位:1586年~1611年)の宸筆(しんぴつ:天子の自筆)による扁額を掲げた重要文化財の「仁王門」に突き当たります。この長谷寺の総門は1894年(明治27年)の再建で、両脇に仁王像、楼上に釈迦三尊十六羅漢像が安置されています。

仁王門から本堂へと続く屋根付きの石段が「登廊(のぼりろう:重要文化財)」です。399段もある石段ですが、勾配は緩やかなので心配することはありません。天井に吊るされる長谷寺形燈籠が雅な趣を感じさせます。

そして行き着いた「本堂」は、徳川3代将軍家光の寄進により1650年(慶安3年)に再建された国宝です。初瀬山中腹の断崖絶壁に、京都の清水寺本堂と同じ懸造り(舞台造)された建物で、ご本尊の「十一面観音立像(重要文化財)」を安置しています。十一面観音立像は徳道上人が造立して以来、何度も火災による再造を繰り返し、現在のものは1538年(天文7年)に再興されました。特筆すべきはその大きさで、像高10m18cmは国宝および重要文化財指定の木造彫刻の中では最大のものとなっています。

他にも“昭和の名塔”と称される1954年建立の「五重塔」、大講堂や書院などがある重要文化財の「本坊」、春と秋に開扉して寺宝の公開を行っている「宗宝蔵」など、境内にはたくさんの見どころがあります。

古典文学にも登場する「花の御寺」

初瀬山が牡丹の名所であることから、古くから長谷寺は「花の御寺」と称されています。4月下旬〜5月上旬ともなれば150種を超える7,000株の牡丹(ボタン)が満開となり、訪れる人の心を動かします。春の桜も吉野山と並び称される千年来の名所ですし、芍薬(シャクヤク)や石楠花(シャクナゲ)も美しく咲き誇ります。夏は20,000株の紫陽花(アジサイ)が境内を埋め尽くし、神々しい蓮華(レンゲ)や可憐な鉄線(テッセン)も見事です。秋は紅葉で燃え上がり、冬は寒牡丹(カンボタン)や冬牡丹(フユボタン)が淡雪と鮮やかなコントラストを描きます。

このような花の美しさも、平安時代の初瀬詣ブームに拍車をかけたことでしょう。長谷寺は『枕草子(作者:清少納言)』、『更級日記(作者:菅原孝標女)』、『蜻蛉日記(作者:藤原道綱母)』など平安時代の古典文学にも登場し、『源氏物語(作者:紫式部)』の玉鬘(たまかずら)の巻では長谷寺で右近が玉鬘と再会しています。そこに記された“二本(ふたもと)の杉”は、今も宗宝蔵と月輪院の間の小道を進んだ先に残っているんですよ。著名な文人たちに愛された長谷寺へ、皆さんもぜひ足を運んでみてください。

長谷寺への交通アクセス等

■ 所在地:奈良県桜井市初瀬731-1

■ 交通アクセス:
◇ JR・近鉄桜井駅北口から桜井市コミュニティバス初瀬・朝倉台線「吉隠柳口行」または「与喜浦行」にて「与喜浦バス停」(約20分/運賃300円)下車、徒歩 約10分
◇ 近鉄大阪線「長谷寺駅」下車、徒歩 約20分

■ 入山時間:8:30~17:00(4月~9月)/9:00~16:30(10月~3月)

■ 入山料金:一般500円/中・高校生500円/小学生250円



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