「奈良室生・室生寺」龍神が住むという霊地に立つ“女人高野”

2016年05月06日

「奈良室生・室生寺」龍神が住むという霊地に立つ“女人高野”

「奈良室生・室生寺」龍神が住むという霊地に立つ“女人高野”

古来より“龍神が住む霊地”とされる室生山の山麓から中腹にかけて立つ「室生寺」。女人禁制だった高野山に対して女性の入山を許したことから“女人高野”とも呼ばれる優しいお寺です。

龍神が住む室生山に立つ山岳寺院です

「室生(むろう)」は三重県境に近い奈良県北東部の宇陀市(うだし)に属するエリアです。奥深い山々と渓谷が連なり、複雑な地形を走る清流などが織りなす風景は神秘的なほどに美しく、中でも室生山は古来より“龍神が住む霊地”とされてきました。その室生山の山麓から中腹にかけて堂塔が点在する山岳寺院、それが「室生寺(むろうじ)」です。JR・近鉄桜井駅から近鉄大阪線で伊勢中川駅方面へ4駅(急行だと2駅/16分/350円)の「室生口大野駅」から、奈良交通バスに乗って行ってみましょう!

女性にも門戸を開いて入山を許した「女人高野」

室生寺の創建は明確ではありませんが、奈良時代の基本資料で697年(文武天皇元年)から791年(延暦10年)に至る95年間の歴史を記した『続日本紀(しょくにほんぎ)』によると、奈良時代末期の宝亀年間(770年~781年)に東宮・山部親王(後の桓武天皇)の病気平癒の祈願が室生の地で行われ、優れた効果があったことから、興福寺の僧・賢憬(賢璟)が朝廷の命でここに寺院を造ったそうです。賢憬は793年(延暦12年)に没し、伽藍の造営を引き継いだのは賢憬の弟子で空海や最澄と並ぶ平安時代初頭の高僧・修円と伝えられます。

創建に携わったのが興福寺の僧であったため、室生寺は長らく興福寺との関係が深かったのですが、1698年(元禄11年)に興福寺の法相宗から離れて真言宗の寺院となりました。その際に同じ真言宗で女人禁制だった高野山金剛峰寺に対し、室生寺は女性にも門戸を開いて入山を許したことから「女人高野」と呼ばれ、今もなお室生寺の代名詞として親しまれています。1964年(昭和39年)には真言宗豊山派から独立して、真言宗室生寺派の大本山となりました。

国宝・重文の建造物と仏像、そして石楠花

修円が伽藍を整えて以来、大きな災厄に遭わなかったため、室生寺には古くからの建造物や仏像が残されています。その幾つかをご紹介してみましょう。

● 弥勒堂(みろくどう)・・・重要文化財
仁王門をくぐり、鎧坂と呼ばれる広い石積みの階段を登った先にあるのが、鎌倉時代前期の建立となる弥勒堂です。柔らかな曲線を描く柿葺(こけらぶき:薄い木片を重ねて敷き詰めた屋根)が印象的なお堂で、堂内の厨子にご本尊の弥勒菩薩立像(重要文化財)を、そして脇壇に衣のドレープも美しい釈迦如来座像(国宝)が安置されています。どちらも平安時代初期の傑作です。

● 金堂(こんどう)・・・国宝
弥勒堂の向かいにある金堂は平安時代初期の建立ですが、江戸時代に礼堂が増築されています。堂内の須弥壇(しゅみだん:堂内に仏像を安置するため床面より高く設けられた壇)の上には、向かって右から地蔵菩薩立像(重要文化財)、薬師如来立像(重要文化財)、本尊釈迦如来立像(国宝)、文殊菩薩立像(重要文化財)、十一面観音菩薩立像(国宝)の五尊像が横一列に並び、その手前には様々なポーズを取った十二神将立像(重要文化財)が安置されています。まさに金堂は優れた仏像の宝庫と言えるでしょう。

● 本堂(ほんどう)・・・国宝
鎌倉時代後期となる1308年(延慶元年)の建立です。真言密教の最も大切な法儀である灌頂(かんじょう:頭頂に水を灌いで諸仏や曼荼羅と縁を結ぶ儀式)を行う堂であることから、灌頂堂とも呼ばれます。ご本尊の如意輪観音坐像は重要文化財で平安時代中期の作。観心寺、神咒寺の如意輪とともに、日本三如意輪観音のひとつとされます。

● 五重塔(ごじゅうのとう)・・・国宝
奈良時代後期もしくは平安時代初期に建立された、高さ約16mの五重塔です。これは屋外に立つ五重塔として国内最小のものであり、法隆寺五重塔に次ぐ歴史を誇ります。丹塗りの優雅な塔で、本堂横の高い石段の上に奥深い樹林や石楠花(シャクナゲ)に囲まれて立つ姿は愛らしくもあり、室生寺のシンボルとして格別の風情を醸し出しています。

● 十一面観音立像(じゅういちめんかんのんりゅうぞう)・・・国宝
金堂に安置されている十一面観音立像は平安時代前期の作で、像高は195.1cm。ふっくらとした頬にうっすらと朱の残る小さな唇、花をあしらった冠飾りなど装飾的かつ女性的な仏像で、そこには温かな優しさが漂っています。室生寺の数ある優れた仏像の中でも人気が高い一木造の彩色像です。


「女人高野」として女性たちからの信仰を集めただけに、室生寺には優しい雰囲気が漂っています。4月末から5月の初旬頃には約3,000株もの石楠花(シャクナゲ)が境内をピンク色に染め、仁王門周辺や鎧坂から五重塔にかけての参道を優しく包み込みます。秋の紅葉も有名で、モミジやイチョウなどが色づいた紅葉シーズンには、五重塔と紅葉のライトアップも行われています。その美しさをぜひその目で確かめてみてくださいね。

室生寺への交通アクセス等

■ 所在地:奈良県宇陀市室生78

■ 交通アクセス:
◇ 近鉄室生口大野駅から奈良交通バス「室生寺行」にて終点「室生寺バス停」(約14分/運賃430円)下車、徒歩 約5分

■ 拝観時間:8:30~17:00(4月~11月)/9:00~16:00(12月~3月)

■ 拝観料金:一般・大学生・高校生・中学生600円/小学生400円



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