ローカルバス路線紹介・・・「笠岡~福山線(井笠バスカンパニー)」

2018年05月16日

ローカルバス路線紹介・・・「笠岡~福山線(井笠バスカンパニー)」

ローカルバス路線紹介・・・「笠岡~福山線(井笠バスカンパニー)」

全国各地のローカルバス路線にスポットを当てていくこのシリーズ、今回は岡山県と広島県の県境を越えて運行する「笠岡~福山線」をご紹介します。全国屈指の狭隘路線としても有名なんですよ。

意外と少ない県境を越える路線バス

古くから文化圏や商圏の境目に設定されていることが多い都道府県の県境。そのため人々の往来は頻繁ではなく、ここを越えて運行する路線バスはなかなか存在しません。昔と違って全国的に高速道路網が整備されていますから、他県への長距離都市間移動の際には高速バスを利用すれば良いわけです。

しかし、今回ご紹介する井笠(いかさ)バスカンパニー運行の「笠岡~福山線」は、文字通り岡山県笠岡市と広島県福山市を結ぶ県境越えのバス路線です。この付近は福山市を中心に尾道市・府中市・笠岡市・井原市の5都市が「福山都市圏」を形成しており、古くから県境にとらわれることのない交流が盛んに行われてきました。そのため、路線バスも当たり前のように県境を越えているのです。

笠岡駅前を出発すると道が...狭い!

そしてこの笠岡~福山線、実はとんでもない狭隘路線(きょうあいろせん:バス路線の中でもとりわけ狭い道路を走行する路線)としても知られているんですよ。それは初めて乗った人なら誰もが「ほんとに通れるの?」とドキドキしてしまうほどなのです。

起点となるJR(山陽本線)笠岡駅前バスターミナルを出発したバスは、国道2号線を西に進み、3つ目の金崎バス停から右折して山陽本線のガード下をくぐります。このあたりから早くも狭隘区間が始まり、古い街並みの路地のような道をバスが通過していきます。車両は日野・リエッセなどの小型路線バスだけでなく、三菱ふそう・エアロミディなどの中型路線バス(全長9m/全幅2.3m)も使われ、この大きな車体が民家の軒先すれすれを抜けていくのです。90度のL字型カーブを曲がるときなどは「絶対にぶつかる!」と肝を冷やしますが、運転手さんは涼しい顔で難なく迷路のような狭隘路を通り抜けていきます。

県境を越えて福山市に入っても...狭い!

もちろん狭隘区間はこれだけではありません。対向車が来たらすれ違うことはほぼ不可能と思われる曲がりくねった道を走り、ようやく広い道に出たと思えば、またすぐに狭隘路に入ります。15番目の篠坂バス停から福山市となってもこの様相は変わらず、バス幅ぎりぎりの集落道のような道を平気で走行していきます。

28番目の培遠中学校前バス停近くからは幹線道路となり、風景は一気に郊外都市へと切り替わります。交通量は増え、信号もあり、乗客も多くなってくるので、先ほどまでのドキドキ感が嘘のように感じるかもしれません。それでも油断は禁物!まだ36番目の厳山バス停~37番目の奈良津バス停間の道は狭く、対向車とのすれ違いに緊張が走ります。そして国道313号線へと左折すれば一気に道は広がり、JR(山陽新幹線・山陽本線・福塩線)福山駅前のバスターミナルに到着するのです。

突然の破産から奇跡の路線維持

最後にこの大変興味深い笠岡~福山線を運行する「井笠バスカンパニー」についても触れておきましょう。もともと岡山県笠岡市、井原市、矢掛町、浅口市、倉敷市、広島県福山市の路線バス事業は「井笠鉄道」という会社が営んでいました。この井笠鉄道が2012年(平成24年)10月12日に、同月末をもってバス事業から撤退し、その後会社を清算すること、つまり破産したことを突然発表します。

当然のことながら公共交通の経営破綻という前代未聞の出来事は、地元の人々に大きな衝撃を与えました。それまで利用していた路線バスが半月後には無くなってしまうのです。しかし、岡山県を中心に生活産業などを展開する「両備グループ」が、地元の公共交通を守るために救いの手を差し伸べます。

両備グループ傘下の中国バスの社内カンパニーとして「中国バス 井笠バスカンパニー」を設立し、11月1日から代替運行を行って路線バスの消滅を回避しました。さらに翌2013年(平成25年)1月には中国バスの完全子会社「井笠バスカンパニー」として法人化させ、正式に路線を受け継いだのです。そこには地元の人々の熱い想いと各行政機関の協力もあり、奇跡の路線維持が実現されました。