かつてはたくさんありました!バスの車体を製造する「コーチビルダー」

2018年09月05日

かつてはたくさんありました!バスの車体を製造する「コーチビルダー」

かつてはたくさんありました!バスの車体を製造する「コーチビルダー」

今はもう国内から消滅してしまいましたが、かつてはたくさん存在していたバスの「コーチビルダー」。その意味と歴史についてお話していきます。

自動車はシャーシとボディで出来ている

一般的な乗用車であっても大型バスであっても、自動車は「シャーシ(車台)」と「ボディ(車体)」で形成されています。シャーシとは自動車を走らせるための基本構成となる動力発生装置(エンジン)、伝動装置(ギア・ドライブシャフト・トランスミッション)、走行装置(フレーム・サスペンション・ステアリング・ブレーキ等)のことで、これらがなければ自動車は走ることも止まることも曲がることもできません。でもシャーシだけで雨風にさらされながら走るわけにもいかないですし、安全を確保するためにも外装が必要になります。これがボディですね。

「コーチビルダー」ってなんだ?

そして、シャーシではなくボディ部分を製造・架装する会社のことを「コーチビルダー(Coach builder)」と呼びます。コーチビルダーはシャーシを自社で製造せず、他社から供給されたシャーシにデザイン性や機能性に優れたボディを載せて販売する独立系の会社であり、イタリアでは「Carrozzeria(カロッツェリア)」と言われます。「ベルトーネ」や「ピニンファリーナ」などのカロッツェリアは有名ですから、車好きの方なら一度は耳にしたことがあるでしょう。ちなみにコーチ(Coach)もカロッツァ (Carrozza) も「馬車」のことなので、始まりは“馬車工房”だったと考えられます。

現在の日本にコーチビルダーは存在しない

現在の日本で大型および中型のバスを製造・販売している会社は「いすゞ自動車」「日野自動車」「三菱ふそうトラック・バス」の3社だけで、この3社がシャーシを開発し、その系列会社となる「ジェイ・バス(日野自動車・いすゞ自動車指定メーカー)」と「三菱ふそうバス製造(三菱ふそうトラック・バス指定メーカー)」がボディを製造しています。シャーシメーカーとその系列会社でバス製造が完遂する流れとなっているため、現在の日本にバスボディを製造・架装する専業のコーチビルダーは存在していません。

かつてはたくさんあったコーチビルダーの歴史

それでもかつてはたくさんのバスコーチビルダーがあったんですよ。戦前などは構造材が木骨で、架装にさほどの技術が必要とされませんでしたから、町工場レベルでもコーチビルダーになることが可能でした。戦後になると航空機産業から転換してきた富士重工業(旧: 中島飛行機、現:SUBARU)や川崎航空機(後の川重車体工業)が、航空機のモノコックボディを武器にコーチビルダーとしてシェアを伸ばしていきます。

そして1970年代になると「日野車体工業(日野系列)」「川重車体工業(いすゞ系列)」「呉羽自動車工業(三菱系列)」「富士重工業」「西日本車体工業」「北村製作所」の6社に集約されるのですが、その中でも富士重工業・西日本車体工業・北村製作所はシャーシメーカーの系列化にない独立系のコーチビルダーとして、オリジナリティあふれるボディを製造していたのです。

しかし、北村製作所は1980年代のスケルトン構造ボディの開発競争に後れをとり、1988年(昭和63年)度を最後に大型・中型のバスボディ製造から撤退、1995年(平成7年)には完全に手を引きます。富士重工業は2002年(平成14年)、当時シャーシメーカーだった日産ディーゼルが指定メーカーを西日本車体工業に一本化したため同年度を持って撤退、最後まで残った西日本車体工業も受注の減少から2010年(平成22年)に業務を終了し、会社を解散することになりました。

それでもまだ西日本車体工業製のバスは、全国各地で現役車両として活躍しています。利用者の立場から本当に使いやすいバスを追求してきたコーチビルダーの作品は、もうしばらくの間、皆さんの街を走り続けます。