日本で唯一の「ガイドウェイバス」が名古屋市にあります

2018年10月31日

日本で唯一の「ガイドウェイバス」が名古屋市にあります

日本で唯一の「ガイドウェイバス」が名古屋市にあります

車両費用の低いバスを路面電車のように誘導するシステムとしてヨーロッパやオーストラリアで実用化されている「ガイドウェイバス」。日本でも唯一、名古屋市で運行されているんです。

「ガイドウェイバス」ってなんだ?

「ガイドウェイバス」とは、通常の大型バスのタイヤの近くに案内輪と呼ばれる小型水平のタイヤを取り付け、それが専用走行路の両脇に備えた高さ180mm程度の側壁面(ガイドウェイ)をたどることで、乗務員の操作はアクセルとブレーキのみ、ハンドル操作は不要となる半自動運転を実現した新交通システムです。

1980年のドイツで車両費用の低いバスを路面電車のように誘導するシステムとして実用化され、オーストラリアやイギリスでも運行されています。なお、発祥のドイツやオーストラリアでは、開発を担当したダイムラー・ベンツのシステム名称である「O-Bahn(オーバーン)」と呼ばれています。

専用走行路が一般車両の侵入を排除

ガイドウェイバスは車両価格や整備費用などのコスト面において地下鉄や路面電車よりも優位であるだけでなく、その専用走行路は一般車両の侵入を排除して高速の定時運行を可能にするメリットを持ちます。左右の案内輪が側壁面をたどることでタイヤの接地面は常に走行路の同じ場所を通過するため、接地面部分だけを舗装してそれ以外の部分に段差や障害物を設ければ、一般車両の走行は不可能になるわけです。

一般道路にバス専用の走行区分となるバスレーンを設けても、やはり違法走行および違法駐停車によって路線バスの円滑な運行が妨げられてしまう可能性があるため、物理的に一般車両の進入を排除することができるガイドウェイバスは、この点においても有利だと考えられます。

日本で唯一の「ガイドウェイバス志段味線」

でも皆さんの中でガイドウェイバスに乗ったことのある方は少ないと思いますし、「そんなバス、見たことも聞いたこともない」という方もたくさんいらっしゃるでしょう。なんてったって日本におけるガイドウェイバスは、たったの1箇所しかないのです。

それが愛知県を走る「ガイドウェイバス志段味線(ガイドウェイバスしだみせん)」です。「ゆとりーとライン」の愛称を持つこの路線は、名古屋市東区の大曽根駅と春日井市の高蔵寺駅間14.9kmを結び、その内の大曽根~小幡緑地(名古屋市守山区)間6.5kmが高架の専用走行路を走るガイドウェイバスとして運行しています。

この間の駅(バス停)は9つ、運賃は200円~250円、平日の朝8時台には2分~4分間隔で発車しています。専用走行路での最高時速は60kmで、鉄道のような高速定時運行を実現しています。なお、小幡緑地から高蔵寺間は、高架区間となる専用走行路を下りて平面区間となる一般道路を走り、その際は案内輪を車体内部に収納します。高架区間~平面区間の最高運賃は440円です。

名古屋市の採用には事情があったのだが...

ゆとりーとラインが走っている名古屋市守山区の志段味地域は、JR中央本線と名鉄瀬戸線に挟まれた鉄道空白地帯であるため、朝のラッシュ時間帯になると道路は大混雑していました。通常であれば15分ほどで抜けられる小幡から大曽根までが1時間以上かかっていたそうです。ところが、この志段味地域に土地区画整理による宅地開発など新しい街づくりが構想されたことで、新たに発生する交通需要に対応するための交通システムが必要となりました。そこで混雑の少ない郊外にも一般道路を走る路線バスとしてルートを伸ばし、建設コストを抑えてバスの機動性を活かせるガイドウェイバスが採用され、2001年(平成13年)より運行が始まったのです。

しかし、それ以降になっても国内の他の地域でガイドウェイバスの営業運行がされた例はありません。やはり海外諸国に比べて道幅の狭い日本の都市には平地にスペースがありませんから、ガイドウェイバスを導入しようとしても名古屋市のように高架の専用走行路を用意せざるを得ないのです。そうなると整備費用は圧倒的に高額となるのですが、バスであるだけに一度で運べる輸送量は少なく、健全な経営を維持し続けることは難しいと考えられるのです。今後もゆとりーとライン以外に日本国内でガイドウェイバスが運行される可能性は限りなく低いと思われます。